キャベツの値段、実は3週間前から見えている
キャベツ1玉の値段が、週によってこんなに違う理由
スーパーの野菜売り場で、キャベツが先週は198円だったのに今週は128円になっている。逆に、天候が崩れた直後は1玉300円近くまで跳ね上がることもある。キャベツは特に価格が動きやすい野菜として知られていて、その理由は単純で、天候ひとつで畑の生育スピードが大きく変わり、出荷できる量が急に増えたり減ったりするからだ。
出荷量が読めないと、スーパー側も困る。仕入れを多めに見積もれば売れ残って廃棄になるし、少なく見積もれば品切れで機会を逃す。特売のチラシやアプリの広告を打つタイミングも、実際にどれだけの量が市場に出回るか分からないまま決めているのが実情だった。
「あとどれくらい採れるか」を先に知る実証実験
この「読めない出荷量」を、収穫より前の段階で予測しようという取り組みが始まっている。JAXA、電通、群馬県嬬恋村のJA嬬恋村が組んで進めている市場実証で、キャベツの出荷量や卸売価格を事前に予測し、その予測値を広告の出稿タイミングや店頭での販売促進の判断に連動させる、という内容だ。
嬬恋村は標高が高く夏でも冷涼な気候を活かした、夏秋キャベツの一大産地として知られる地域だ。ここで育つキャベツの生育状況や畑の広がり具合を、地上からではなく上空から継続的に観測し、天候データなどと組み合わせることで、「あと何週間後に、どれくらいの量が市場に出るか」を見積もろうとしている。
予測が当たれば、スーパー側は品揃えや特売の計画を数週間前から立てられるようになり、電通側は広告出稿の量やタイミングを実際の供給量に合わせて調整できる。結果として、余分な仕入れによる廃棄も、品切れによる機会損失も減らせる、というのが狙いだ。いわゆるフードロス削減を、値札の裏側にある「読み」の精度を上げることで実現しようとしている。
畑を見ているのは、実は人工衛星だった
ここで「上空から継続的に観測」と書いたが、これは地上のカメラやドローンの話ではない。使われているのは衛星データだ。人工衛星は同じ場所を定期的に通過しながら畑を撮影できるため、キャベツの葉の色づきや畑の面積の変化を、広い範囲にわたって効率よく追い続けることができる。人が畑を一枚ずつ見て回るのに比べて、これは決定的に効率が違う。
農作物の生育を衛星で見守るという発想自体は、海外では穀物の収穫量予測などですでに使われてきた手法とされている。それを日本の産地野菜、しかも広告や店頭の販売戦略にまで直接つなげる形で実証しようとしている点が、今回の取り組みの新しさだと言える。
家計への影響で言えば、これはキャベツが劇的に安くなるという話ではない。ただ、供給と需要のミスマッチが減れば、価格の乱高下がいくらか穏やかになったり、廃棄コストが下がった分が価格に反映されたりする可能性はある。あくまで実証段階の取り組みであり、今後どこまで実際の店舗展開に広がるかは、まだ見えていない。
次にスーパーでキャベツを手に取るとき、その値段が決まった裏側を、畑の上空から見ている視点があることを思い出してもいいかもしれない。
参考
- https://sorabatake.jp/46938/