天気予報とスーパーの野菜、実は同じ「目」で見られています
天気予報の的中率、実は「海の体温計」で決まっている
台風の進路予想がここ数年でかなり精度を上げているのに気づいたことはないだろうか。あれは予報士の腕が急に上がったわけではない。海面の温度を宇宙から測る技術が積み重なってきた結果だ。
海面水温は台風の勢力や進路を左右する。温かい海の上を通れば台風は発達し、冷たい海に出ると弱まる。この温度分布を、地上の観測船だけで把握するのは無理がある。海は広すぎるし、船は少なすぎる。そこで衛星が地球全体の海面温度を毎日なぞるように測り続けている。天気予報も、漁業の海流予測も、この観測データの上に成り立っている。
野菜の値段が、畑の「疲れ」で決まる仕組み
もうひとつ、生活に効いてくるのが作物の健康状態だ。干ばつや猛暑で作物がストレスを受けると、収穫量が落ち、スーパーの野菜や穀物の値段が上がる。ただし作物が「弱っている」ことは、見た目が枯れるよりずっと前から起きている。
実は植物は光合成をするとき、使いきれなかった光のエネルギーをわずかに発光という形で外に逃がしている。この発光(蛍光)の強さは、植物がどれだけ元気に光合成をできているかのバロメーターになる。人間の目には見えないほど微弱な光だが、これを宇宙から捉えられれば、干ばつの兆候を作物が枯れる前に察知できることになる。まだ実証段階の技術だが、将来的には不作予測や食料価格の安定化に役立つと期待されている。
その「目」が、いよいよロケットに収まった
この2つの役割を担う機体が、いま南米フランス領ギアナの欧州宇宙基地で打ち上げの最終準備に入っている。
海面温度や海氷を観測する「Sentinel-3C」は、欧州の地球観測計画コペルニクスの一員で、天気予報や気候監視に使われてきたシリーズの最新機だ。そしてもう一機、植物の蛍光を捉えて作物のストレスを見張る「FLEX」は、この観測方法を専門に行う衛星として世界初の試みになる。
この2機は同じロケット「Vega-C」に相乗りして打ち上げられる予定で、現地では機体を守るための先端カバー(フェアリング)の中に、すでに封入する作業が完了したと発表されている。ロケットの中身が密閉されるというのは、打ち上げまでのカウントダウンが後戻りできない段階に入ったことを意味する。
天気予報の的中率も、野菜の値段も、普段は意識しない場所で静かに支えられている。その支え手が今まさに、南米の発射台でロケットに包まれて出番を待っている。
参考
- https://www.esa.int/Applications/Observing_the_Earth/FLEX_and_Sentinel-3C_sealed_within_Vega-C_fairing