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機内Wi-Fiが「動画OK」になった、地味にすごい話

半年前は「開かない」が普通だった

去年、国際線で機内Wi-Fiを買ったら1200円払ってニュースサイトのトップページすら開けなかった。読み込み中のグルグルを30分見て寝た記憶がある。

ところが最近、別の便でなんとなく繋いでみたら、普通に動画配信サービスが再生された。バッファリングもほぼなし。座席に「無料Wi-Fi」の表示が出ていて、拍子抜けするくらい普通に使えた。

何が変わったのか気になって調べると、答えは機内の設備そのものではなかった。頭上、はるか上空で起きていた変化だった。

そもそも、なぜあんなに遅かったのか

従来の機内Wi-Fiは、赤道上空およそ3万6000kmに浮かぶ「静止衛星」を使っていた。地上のスマホの電波と違い、これは地球の自転と同じ速さで動くので常に同じ場所に見える、いわば固定の中継地点だ。

ただし距離が遠すぎる。東京から見て富士山どころか、地球の直径3個分くらい先にある電波塔に向けて発信しているようなものだ。電波は届くが弱く、しかも1機の衛星の通信容量を、その下にいる何百人もの乗客が奪い合う。動画が固まるのは当然だった。

「近くに立つ」だけで速くなる

新しい方式は、高度500km前後を飛ぶ小型の衛星を何千機も並べて使う。1機あたりの担当エリアを狭くし、常にどこかの衛星が頭上を通り過ぎるようにリレーする仕組みだ。

距離が近くなれば、電波は強く、往復にかかる時間も短くなる。コンサートで言えば、遠くのスピーカーから聞くのと、近くの小さいスピーカーの真下に立つのとの違いに近い。音量も反応速度も変わる。

この「近くに大量に置く」方式を航空業界向けに展開しているのが、民間の衛星通信サービスだ。航空会社が機体にアンテナを設置し、乗客はいつも通りWi-Fiに繋ぐだけで、裏側の中継先がまるごと変わっている。

実は、宇宙開発競争の副産物だった

この小型衛星群は、もともと地上のインターネット過疎地向けに開発されたものだ。山間部や離島、船の上など、光ファイバーが届かない場所に通信を届ける目的で打ち上げられてきた。

飛行機の上空も、実は地上と同じ「電波の届きにくい場所」の一つだった。だから同じ仕組みがそのまま流用できた。乗客が体感しているスピードの差は、宇宙開発の分野で衛星を安く大量に飛ばす技術が進んだ結果でもある。

この先どこまで広がるか

現在この仕組みを採用する航空会社は増えつつあると報じられている。今後、無料Wi-Fiが標準搭載される便がさらに広がれば、「機内でだけ連絡がつかない時間」が過去の話になる日も近いかもしれない。

次に飛行機に乗るとき、座席の上のWi-Fi表示をちょっと疑ってみてほしい。そこに繋がっているのは、地上から500kmの距離を保って飛び続ける、無数の小さな衛星かもしれない。

参考