保険金がスマホに即日振り込まれる日
屋根が飛んだ翌日、やることが多すぎる
台風が過ぎた翌朝、瓦が何枚か飛んで雨どいが曲がっている。まずやるのは写真撮影だ。破損箇所を何枚も撮り、保険会社に電話をかけ、罹災証明書を市役所に取りに行き、査定員の訪問を待つ。ここまでで数日、査定員が実際に屋根に上って確認するまでさらに数日から数週間かかることも珍しくない。台風の規模が大きいほど被害件数も増え、査定員の予約はどんどん先延ばしになる。
屋根の修理業者はすでに順番待ちの列ができているのに、保険金がいつ振り込まれるか分からないと、修理の契約にも踏み切りにくい。生活再建は「お金がいつ来るか」で止まってしまう。
訪問しなくても被害が分かる仕組み
ここ数年、損害保険各社の間で広がっているのが、現地訪問の前に被害エリアをおおまかに把握してしまう仕組みだ。台風が通過した直後の画像と、通過前の画像を見比べることで、屋根の一部がなくなっている家、周辺が水に浸かった田畑や住宅地を、色分けした地図上に自動的に浮かび上がらせる。
この解析には画像認識の技術が使われており、人が一件ずつ見比べなくても、被害の可能性が高いエリアを先に絞り込める。査定員は「どこに優先的に向かうべきか」をあらかじめ知った状態で現地に入れるため、訪問件数あたりの確認時間が短くなり、結果として支払いまでの日数が縮む、と報じられている。
その「上空からの画像」、実は宇宙の話
この被害地図のもとになっている画像、実は多くの場合、飛行機やドローンではなく人工衛星が撮影したものだ。地球の低い軌道を回る観測衛星は、数日おきに同じ地域の上空を通過しており、台風の前後で同じ場所を撮り直すことができる。ドローンは一軒一軒の詳細を見るのは得意でも、市町村をまたぐ広範囲を一度に撮ることは難しい。衛星ならその弱点を補い、広い被災地全体を一枚の画像として押さえられる。
雲がかかっていても地表の状態を捉えられるレーダー方式の衛星画像が使われることもあり、台風直後で天候が悪い状況でも被害把握を進められる点が、この仕組みが広がっている理由のひとつとされている。
家計への跳ね返り方
査定の日数が短くなることは、単に「早くお金がもらえて嬉しい」で終わる話ではない。修理業者への支払いを待たせる期間が短くなれば、雨漏りが悪化する前に応急処置から本格修理へ進めやすくなる。仮住まいが必要な世帯では、その期間そのものが家計の負担になるため、支払いまでの日数は生活再建コストに直結する。
一方で、衛星画像だけで内部の損傷まですべて判定できるわけではなく、最終的な金額確定には現地確認が残るケースも多いとされる。それでも「大まかな被害範囲の把握」にかかる時間が減るだけで、保険会社側の対応スピード全体が底上げされる。
保険を選ぶときに保障内容や保険料だけでなく、「災害時にどれだけ早く支払われる仕組みを持っているか」が比較材料になる時代は、すでに始まっているのかもしれない。