山でスマホが圏外でも、押すだけで居場所が伝わる装置
電波の届かない山奥で、助けを呼ぶ方法
登山中に足を滑らせて動けなくなった。スマホを見ると「圏外」。こういう場面、山や海、砂漠のように基地局から遠い場所では珍しくない。携帯電話の電波は、近くにアンテナ塔がなければ届かない。谷や尾根に遮られればなおさらだ。
こうした「圏外の遭難」に備えて、登山者や船乗りが携帯する小さな装置がある。PLB(パーソナル・ロケーター・ビーコン)と呼ばれるもので、非常時にボタンを押すと、携帯電話の基地局を一切介さずに信号を発信する仕組みになっている。
頼っているのは携帯電話網ではない
PLBが送る信号は、上空を飛ぶ人工衛星に向けて発射される。衛星がその信号をキャッチし、地上の管制局に転送、そこから現地の捜索救助機関へと位置情報が伝わる。携帯電話網が生きているかどうかとは無関係に機能するため、電波塔から何十キロも離れた山中や、海の真ん中でも救助要請が届く。
この捜索救助の仕組みには、NASAが関わって開発してきた技術が土台にあると報じられている。もともと宇宙船やロケットの安全確保のために磨かれてきた通信・信号処理の技術が、地上の遭難者を見つけるためにも転用されてきた形だ。今回の報道では、こうした技術が実際に5人の命を救ったとされている。詳しい経緯までは伝えられていないが、電波の届かない場所での遭難救助にこの装置が使われたことは間違いないという。
いくらで、誰が持てるものなのか
PLBは家電量販店やアウトドア用品店で購入でき、月額料金は発生しないタイプが一般的だ。本体を一度購入すれば、あとは電池交換程度の維持費で済む。登山や沿岸のレジャーが多い人にとっては、スマホの圏外表示を見て不安になるより先に、こうした装置を持つという選択肢がある。
価格帯は数万円程度からとされ、決して安い買い物ではないが、電波の届かない場所に出かける頻度を考えれば、保険に近い感覚で捉えられている。
実は「宇宙」の話だった
この装置が携帯電話網を使わずに位置を伝えられる理由は、単純だ。地上の基地局ではなく、頭上の衛星をアンテナ代わりに使っているから。つまり、山で圏外になっても居場所が伝わるのは、地上のインフラではなく、宇宙にある中継地点のおかげということになる。
遭難者が握りしめるちっぽけなボタンの先には、地球を回る衛星と、それを支えてきた宇宙開発の技術が静かに控えている。
参考
https://www.nasa.gov/technology/tech-transfer-spinoffs/nasas-life-saving-technology-where-cell-signals-cant-go/