月の資源、早い者勝ちにしないための約束に新たな1カ国
新しい住人が来る前に、規約に判を押してもらう
新しいマンションに人が増えるとき、管理組合はたいてい「共有スペースの使い方」や「ゴミ出しのルール」をあらかじめ決めておく。住人が増えてから揉めるより、増える前に約束を交わしておいたほうがトラブルが少ないからだ。
先週、ワシントンで似たようなことが国同士で行われた。ただし対象は「共有スペース」ではなく、月や火星だ。
71番目の署名国
現地時間8月31日、アメリカの宇宙機関の本部で開かれた式典で、トルコ共和国がある取り決めに署名した。名前は「アルテミス合意」。月や火星の探査を「平和的に、透明性を持って」進めるための国家間のルールブックで、トルコの参加によって署名国は71カ国に増えた。
式典を主催した機関の長官は、トルコを「71番目の署名国」として歓迎する言葉を述べたという。71という数字だけを見ると地味に思えるが、これは「月に行く前に、まずルールを決めておく」という発想に、世界の多くの国がすでに同意しているということでもある。
なぜ「行く前」にルールが必要なのか
月には水や資源になりそうな氷、金属を含む土などがあると考えられている。もし将来、複数の国や企業がそこで作業をするようになったとき、誰も何も決めていなかったらどうなるか。
- 「先に旗を立てたから自分の場所だ」と言い出す国が出てくるかもしれない
- 探査機同士が予告なく同じ場所に降りて、危険な状況になるかもしれない
- 誰かが困っても、助け合う決まりがないかもしれない
アルテミス合意は、こうした状況を避けるために「資源の利用は妨害しない」「活動の情報はできるだけ公開する」「緊急時には互いに助け合う」といった原則を、法的拘束力のある条約ほど重くはない形で国同士が約束し合うものだ。マンションの管理規約が、法律ほど厳しくはないけれど、住人同士のトラブルを防ぐために機能しているのと近い。
まだ誰も住んでいない場所の話、なのに
面白いのは、月にはまだ誰も定住していないのに、すでに71カ国がその使い方について約束を交わしている、という点だ。普通、ルールは問題が起きてから作られることが多い。今回はその逆で、問題が起きる前に、参加する国を増やしながらルールを固めている段階にある。
トルコがどのような理由でこの合意に加わったのか、原記事には詳しい説明はない。ただ、月や火星での活動に関心を持つ国が着実に増えていること自体は、今回の署名という事実からうかがえる。
数十年後、月面に本当に基地や作業拠点ができたとき、今回の「71番目の署名」がどんな意味を持つことになるのか。答えが出るのは、まだ先の話だ。
参考
https://www.nasa.gov/organizations/oiir/artemis-accords/nasa-welcomes-turkiye-as-newest-artemis-accords-signatory/