天気予報が当たる場所、実は3万6000km先にあります
天気予報アプリ、最近「当たる」と思ったこと
降水確率の表示が妙に細かくなった、台風の進路予報が数日前から精度よく出るようになった——そう感じたことがあるなら、それは偶然ではない。天気予報の的中率は、実は「空をどれだけ丁寧に見張っているか」でほぼ決まる。そして今、ヨーロッパと北アフリカの空を見張る新しい「目」が、ようやく定位置についた。
地上400kmではなく、3万6000km上空にいる理由
天気予報に使われる観測機には、大きく分けて二種類ある。地上400kmくらいを高速で飛び回るタイプと、赤道上空3万6000kmに「浮いたまま」動かないタイプだ。
後者がなぜ動かないでいられるかというと、その高さでは地球を一周する速さが、ちょうど地球の自転と同じになるから。つまり地球と一緒に回っているので、地上から見るとずっと同じ場所に止まって見える。ヨーロッパと北アフリカの真上に、24時間そこだけを見つめ続ける定点カメラを設置するようなものだ。
台風の進路や大雨の兆候を早めにつかむには、この「ずっと同じ場所を見ている」ことが重要になる。動き回るタイプでは、同じ地域を再び通過するまで数時間の空白ができてしまうからだ。
「調整期間」というのは、新入社員研修に近い
この定点カメラが、目的の位置にちょうど到着したというのが今回の話だ。到着してすぐに仕事を始めるわけではなく、これから機器の向きを微調整したり、送られてくる映像が正しいかを確認したりする期間に入る。新しく配属された観測員が、いきなり現場に出るのではなく、まず研修を受けるようなものだと思えばいい。この期間を終えて初めて、実際の天気予報に使われるデータを送り始める。
実は、これも宇宙の話だった
ここまで「定点カメラ」と呼んできたものの正体は、欧州が運用する気象衛星「MTG-I2」。欧州宇宙機関(ESA)は、この衛星が予定していた静止軌道への到達を発表した。今後、調整期間を経て本格的に稼働し始めれば、ヨーロッパと北アフリカの天気予報を何年にもわたって支える見込みだという。
普段何気なく開く天気予報アプリの数字の裏には、こうして何年もかけて所定の場所に運ばれ、位置を合わせている機械がある。次に降水確率をチェックするとき、その数字が3万6000km先から届いているかもしれない、と思うと少し景色が変わる。
参考
- https://www.esa.int/Applications/Observing_the_Earth/Meteorological_missions/meteosat_third_generation/MTG-I2_reaches_its_final_orbit